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非平衡ダイナミクス研究室

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2014年度

非平衡ダイナミクスセミナー
講演:永幡  裕(北海道大学生命科学院 生命融合コース D3)
題名: Markov連鎖の持つ時間階層構造について:複雑分子系の異性化反応ネットワークを例に
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2015年1月5日 (月) 15:00~16:30

概要
十分に長い時間経つと平衡状態に達する有限 Markov連 鎖(有限 でエルゴード的かつ可逆)の時間階層構造について、第一原理計算から反応経路自動探索手法[1]を用いて取り出してきた異性化反 応ネットワークを使って、 数値的な観測結果とアルゴリズムを用いた予測を議論する。  様々な物理現象における変化には、何らかの状態変化を伴っている場合が多い。分子の吸収?発光スペクトルの変化、感染症の 拡 大、人工衛星の惑星圏間の移動、細胞内外でのシグナル伝達等が挙げられる。例えば、準安定状態が何千もあり、多様な時空間スケー ルをもつ系において、どのような理論的な枠組みを用いれば複雑な状態から状態へのダイナミクスを自然に理解することができる だろ うか。  本研究では分子の異性化反応ネットワークを例に、そこに埋め込まれた時空間階層構造の見つけ方と予測の仕方について提案す る。 ここでいう時間階層構造とは、複数の状態があたかも1つの状態であるかの様に振る舞う現象:反応速度論において定常状態近似や迅 速平衡近似と呼ばれている振る舞いを指す。こうした近似を用いれば適切な遷移率を求めることができるが、複雑なネットワーク 上で どのようにそれらの近似が達成されるかについて明らかにされているとは言いがたい。我々は、ある複雑分子系(C5H8O)の反応 速度式(マスター方程式)をMarkov連鎖に変換し、そのワンステップの(観測)時間間隔を変えることで、状態間遷移がど の様 に粗視化されてゆくのかについて観測した。また、アルゴリズムを用いて反応ネットワークを解析することで、それらの時空間階層構 造を予測することにも成功し、実験結果を再現することにも成功した。  我々の研究成果は、タンパク質一分子時系列解析を含む、多彩なMarkov連鎖に基づく手法への応用はもちろんのこと、 Perron-Flobenius演算子の離散化と組み合わせることで多様な力学系への応用が期待される。特に後者は、化学 反応 における状態の直接抽出に対応し(反応速度定数をよく見積もる現象論である)遷移状態理論の理論体化に対応する。時間があれば、 Markov連鎖の時空間階層構造に対して理論的枠組を与えるための幾つかの考察を紹介する。



集中講義
講演:早川 美徳(東北大学 教育情報基盤センター 教授)
題名: 『「群れ」の動力学 』
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年12月15日 (月)~12月17日 (水)

詳細はこちらをご覧ください。



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:高木 拓明(奈良県立医科大学 / 医学部 / 講師)
題名: 細胞運動解析から細胞の確率的情報処理機構を探る
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年11月27日 (木) 15:00~17:00

概要
細胞は,明示的な外部刺激が存在しない場合にも自発的な ダイ ナミクス を有する。 その能動的な「ゆらぎ」の機能的意義を解明することは,細胞システムの設計原理を 探る上で重要である。我々は細胞の自発的な運動(外部刺激非存在下でのランダムな 運動)に着目し、1細胞計測による定量的かつ豊富な実験データに基づいた理論と実験 の融合研究を実施して来た。具体的には細胞性粘菌を用いた2D運動軌跡データを基に、 ブラウン運動の解析を踏まえた各種統計解析を実施した結果、細胞の自発運動は複数の 時間スケールを伴う異常拡散を示し、それは細胞極性(非対称性)や速度ゆらぎの乗算性 を取り入れた一般化ランジュバンモデルで記述出来ること、及び細胞の走電性応答 (電場入力に対して示す方向性運動)がその自発運動を適宜バイアスすることによって 実現されており、野生型細胞の運動速度の記憶項は、入力変化に対して柔軟に追随する のに適した強度となっている可能性、などを明らかにして来た。 本セミナーではそれら一連の結果について紹介する。また、結果の一般性を探る為、T細胞の運動解析も同様な立場 から 進めている。その共通性と差異についても触れたい。



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:R. Stephen Berry(The University of Chicago 教授)
題名: Matching the Macro and the Micro
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年11月14日 (金) 16:00~17:30

概要
Since it has become possible to study small systems, such as atomic and molecular clusters of several or tens of atoms,we are finding examples of phenomena that are well described at the macro level, e.g. by traditional thermodynamics, that appear to violate those descriptions when we try to apply them to small systems. A vivid example is the way small clusters violate the Gibbs Phase Rule. We are just beginning to understand how to reconcile these apparent violations and to match the macro and micro approaches by finding the causes of the apparent violations and then determining the approximate maximum size of systems for which we could observe such apparent violations. At present, we see many more open questions, situations still to be explored, than resolved examples. Rather, we now recognize how we can approach those open problems systematically.



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:Normann Mertig(首都大学東京 DAAD-JSPS博士研究員)
題名: Complex paths for regular-to-chaotic tunneling
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年10月16日 (木)15:00~16:30

概要
We study generic Hamiltonian systems where regions of regular and chaotic motion coexist in phase space. While classically these regions are separated, quantum mechanically dynamical tunneling from the regular to the chaotic phase space region occurs. We study this regular-to-chaotic tunneling process both quantum-mechanically and semiclassically. For its semiclassical understanding we develop a prediction which is based on orbits of the complexified dynamics. We show that our approach gives excellent predictions for model systems like the standard map. We further comment on extensions of these results to generic mesoscopic devices like optical microcavities and microwave billiards.



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:佐野 幸恵(筑波大学 システム情報系 社会工学域 助教)
題名: ソーシャルメディアを用いた社会の雰囲気の観測
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年7月17日(水)15:00~17:00

概要
インターネットの普及により,ブログやツイッターに代表されるソーシャルメディアへの書き込みが増加し,その結果,ソーシャル メディアには現実社会で起こる季節性イベントやニュースなどの大衆の興味が反映されている.さらにそれらに関する単語の出現 頻度 には,ベキ関数などの明らかな数理的なパターンも観測されている[1].  本発表では,さらに一歩踏み込み,単純な単語頻度変化を超え,より曖昧な社会の感情や雰囲気といったものの観測可能性につ いて 議論する. 本発表では,まずソーシャルメディアに関する最先端の研究やIT企業の取り組みを紹介し,われわれが観測した東日本大震災時の日本のブログにおける感情変化について報告す る.  本発表は,高安美佐子氏(東工大総理工)と高安秀樹氏(ソニーCSL)との共同研究である
[1] Y. Sano, K. Yamada, H. Watanabe, H. Takayasu, and M. Takayasu, Phys. Rev. E, 87, 012805 (2013).



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:濱田 実樹 (奈良女子大学 人間文化研究科 複合現象科学専攻 D1)
題名: 時間遅れを伴う造血幹細胞の動態モデル
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年7月9日 (水)15:00~17:00

概要
造血幹細胞は、血液の主要な細胞成分である赤血球や白血球の起源となる幹細胞であり、主に骨髄に存在している。造血幹細胞は多 分化能と自己複製能をもちあわせていて、これらの能力を以て生涯にわたり自身の恒常性を保つことで、全身の血液成分や免疫系 の構 成を支えるという重要な役割を担っている。  造血幹細胞一つから血液を構成する細胞成分を生み出すことができる能力をもつため、異常な造血幹細胞を除いた骨髄に正常な 造血 幹細胞を移植し骨髄の造血を正常化させる造血幹細胞移植は血液性の重篤な疾患に対して有効な治療法であるとされている。造血幹細 胞数の動態は生体現象そのものに対して大きな影響を与えているといえる。一方で造血幹細胞の動態にはさまざまな因子が関係し てい て具体的にどのような仕組みで恒常性が維持されているのか、分化先が決定されているのかなどは未解明である。 本研究では、自己複製期間による時間遅れが造血幹細胞の動態にどのような影響を与えているかについての解明を試みる。 最近の研究において、造血幹細胞のみが持つと考えられていた自己複製能がその分化先である前駆細胞においても確認されること が明 らかになっている。本研究ではこれらをふまえ造血 幹細胞と前駆細胞の 2 種系モデルを構築しその振る舞いを解析する。 解析により、造血幹細胞から前駆細胞への分化が起こらない場合には両者の平衡解が局所安定である時間遅れのときも、移入率を ある 値以上としたときに造血幹細胞、前駆細胞ともに不安定化して振動解をもつことが明らかになった。 このことから造血幹細胞から自己複製能をもつ前駆細胞への分化が原因となって振動が起こる可能性が示唆される。解析結果をふ ま え、振動が引き起こされる具体的な要因について考察をする。



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:小川 駿 (京都大学情報学研究科)
題名: 平均場ダイナミクスにおける遷移線形化による非線形応答理論
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年6月10日 (火)15:00~17:00

概要
長距離相互作用を有する大自由度ハミルトン力学系は,長時間,非平衡準定常状態に留まってから衝突効果によって熱平衡状態へ ゆっくりと緩和することが知られている.系のサイズが十分大きい場合,我々は熱平衡状態を観測できず,準定常状態しか観測で きな いことがある.この準定常状態はVlasov方程式(無衝突Boltzmann方程式)の安定定常解に対応する[1].本講演で は主に, 準定常状態における外力への非線形応答についてお話する.ここでは素朴な摂動論は用いず, 遷移線形化という方法[2]によって外力への応答を高次摂動を用いずに求める.遷移線形化とは,無限時間後の終状態を仮定し,Vlasov方程式をその終状態の周りて? “線形化” し,形式的に解いた後, 終状態を自己無撞着に求める方法である.この非線形応答理論による結果は外力が十分小さい場合,1次では線形応答理論による結果を再現するが,非線形な項は通常の 摂動 論とは異なる結果を出す.また, 臨界点直上やその近くでの応答も求めることができる.さらに, ハミルトニアン平均場モデルにこの手法を適用し,具体的に物理量を求め, 臨界現象について議論する.本発表は山口義幸氏(京大情報)との共同研究[3]による.
[1] A. Campa, T. Dauxois, and S. Ruffo, Phys. Rep. 480, 57 (2009).
[2] C. Lancellotti and J. J. Dorning, Trans. Th. Stat. Phys. 38, 1 (2009).
[3] SO and Y. Y. Yamaguchi, Phys. Rev. E 89, 052114 (2014).



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:鹿野 豊 (分子科学研究所)
題名: 操作的観点から見た物理学法則の再構築の試み
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2014年5月14日(水)15:00~17:00

概要
今までに確立されてきた物理学法則は、その後の物理現象を説明するために演繹的な体系が大抵の場合、とられてきた。それは物理 現象を記述するためにハミルトニアンをまずは用意し、それと初期条件さえ決まれば原理的にはすべての現象は決まるはずである とい う考えに基づいていた。しかし、新しい物理学法則を見いだそうとする際にこの考え方では限界があるのではないか? そこで、我々は操作論的観点から物理学理論を再構築を目指し、操作論的観点で理論が構築された情報理論を機軸にして、現在、 どこ までであれば、物理学法則と情報理論の対応関係が明確に出来るかを論じる。これまでのところ、熱力学のトイモデルである非対称な 場合も含むシラードエンジンと平衡統計力学の場合について我々の結果を照会する。そして、現状の道具立てでの限界も論じる。 そし て、本セミナーでは操作論的観点での物理学理論を再構築するという試み事態の意義も議論したいと思う。 本研究は東京工業大学の細谷暁夫氏と大阪市立大学の丸山耕司氏との共同研究結果によるものである。




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