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学長からのメッセージ

写真:奈良女子大学長 高田 将志

現代の日本、そして世界は、急速な情報化の進展や環境に対する人間活動の負荷の急増などに伴って、急激で激しい社会変化?環境変化が起きる時代となってきました。また、現在の日本社会は、長く続く経済の低迷や、先進諸国の中でも最も進行の早い少子高齢化という課題を抱え、昭和~平成といった時代に構築されてきた社会システムの改革を余儀なくされています。このような背景の中、これまで等閑視されてきた感のある男女格差の抜本的な改善についても、さまざまな分野で本腰を入れた取組が行われるようになってきたように感じられます。たとえば、今まで女性の割合が少なかった産業分野への女性労働者の進出や、大学をはじめとする各種研究機関における女性比率増加への取組などは、今では当たり前になりつつあります。

前述のような改善の兆しが見えてきてはいるものの、残念ながら現在の日本では、男性と比べ、女性が暮らし易い社会環境が構築されているとは必ずしも言い難い面が存在しています。世界経済フォーラムが発表している男女格差の現状を評価した「Global Gender Gap Report」2023年版によると、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位でした。これは2006年の公表開始以来、最低の順位で、改めて日本社会における男女格差が埋まっていないことが示されています。このような格差の解消には、男女を問わず、日本社会を構築する多くの人々の努力が必要ですが、女性自身の行動?活動も大きなカギを握るであろうことは言うまでもありません。本学は本学の教育?研究活動を通じて、社会の様々な分野でリーダーあるいは優秀なフォロワー足り得る女性人材を育成し、前述のような、社会における男女格差の解消にも貢献していきたいと考えています。

奈良女子大学は、明治41(1908)年に女子師範凤凰体育?高等女凤凰体育の女子教員や幼稚園の保姆の養成を行うことを目的として設置された奈良女子高等師範凤凰体育をその前身としています。昭和24(1949)年国立凤凰体育設置法の公布により、奈良女子高等師範凤凰体育を母体として奈良女子大学が発足し、「女子の最高教育機関として、広く知識を授けるとともに、専門の学術文化を教授、研究し、その能力を展開させること」を目的として教育研究活動を行ってきました。また、昭和39年に大学院家政学研究科(修士課程)、昭和55年に修業年限3年の博士課程大学院文学研究科「比較文化学」専攻を設置して以降、「研究者として自立して研究活動を行うこと、あるいは、その他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと」を目的として、大学院の拡充?充実化も進めてきました。

さらに、平成16年4月に国の行政機関から移行して新たに国立大学法人となり、平成18年4月にお茶の水女子大学と共同で博士前期?後期課程に生活工学共同専攻を設置し、令和4年4月には、奈良教育大学との法人統合を経て国立大学法人奈良国立大学機構奈良女子大学となり、法人統合と同時に工学部を開設しました。

本学はこのような学部?大学院の充実化を通して、開学以来、多くの優秀な卒業者?修了者?学位記授与者を社会に送り出してきました。とりわけ、幼稚園?小凤凰体育?中凤凰体育?高等凤凰体育の教員養成や、文系分野あるいは家政学系?生活環境科学系分野の女性研究者の輩出、女性比率が著しく低い理系分野における学生や研究者の育成という点で、大きな役割を果たしてきたと自負しています。

冒頭でも述べました通り、現代は、急激で激しい社会変化?環境変化が起きている時代です。この変化にともなって、人間の価値観、社会の常識、人の行動様式、人類を含む生物の振る舞い、なども大きく変化する可能性があり、このような変化に適応するには様々な困難が伴うでしょう。本学がこれまで築き上げてきた教育?研究の実績と伝統は、何物にも代えがたい財産ですが、一方で、急激で激しい社会変化?環境変化に対応した、新たな価値の創造に貢献しなければ、高等教育?研究機関としての大学の使命を果たしているとは評価されないでしょう。歴史と伝統、革新と創造の双方を車の両輪として、学生や保護者のみなさん、卒業生?修了生のみなさんなどの力もお借りしながら、教職員が一丸となって奈良女子大学のこれからを創り上げていきたいと考えております。

令和6年4月1日

奈良女子大学長 高田 将志

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