平成27年度奈良女子大学入学宣誓式 学長式辞

 

   新入生の皆さま、編入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。
 奈良女子大学の教職員一同は、本日ご臨席の、元学長、名誉教授、同窓会である佐保会理事長、奈良佐保短期大学長、放送大学奈良学習センター所長の先生方と共に、皆さまのご入学を心より歓迎いたします。本日ご同伴されましたご家族の方々、また全国各地で本日のご入学をお喜びのご親族の方々に、心よりお祝いを申し上げます。 大学入試は競争試験ですので、皆さんはその勝者として本日ここにお集まりになっています。
 先ほど紹介があった本講堂の緞帳は、皆さんの先輩の同窓会である佐保会からの寄付で作られました。そして皆さんの大先輩である、小倉遊亀画伯が、構図を描かれたものです。
ご本人のお言葉ですが、「これは大学の5階から見た若草山の山並をバックに、大きな古い桜の樹が、今や満開に咲きほこった光景を描きました。画面いっぱいに咲きほこる桜の花には一点の不純さもなく香気ふく
いくと両手をひろげて、己の力のすべてを出しています。若い皆様の思い思いの方向に進んでゆかれようとするお姿ではないかと思います。皆様の前途を祝福して『爛漫』という題にさせて頂きました。」という後輩を思う人生訓が愛情あふれる力強いタッチに表れています。今日は、本学を囲んで流れる佐保川の堤の桜が満開です。入学の記憶としてふさわしいと思いますので、是非見物をお勧めします。

  皆さんには無限の可能性があります。自分の人生を自分で作り上げることが可能です。皆さんが今まで学んできたのは「学校」ですがこれからは「大学」になります。学ぶ場所から大いに学ぶという態度に移行します。受験勉強では「できる」ことを目標として学んだはずですが、大学では「わかる」ことを学習の目的とします。獲得された能力は皆さんの生涯を幸せにする基盤となります。
 ご存知のように、本学には文学部、理学部、そして生活環境学部があります。さらに大学院の修士コースと博士コースがあります。今や皆さんの同世代の半数が4年制大学を卒業しますので、高度な専門家を目指す場合修士課程を修了することが必要になります。入学したばかりですが、人生の大きな選択ですので大学院進学をぜひ考えてください。さて、皆さんが入学された、文学部の認識方法は「世の中を言葉で切り取る」ことです。理学部の認識方法は「世の中を数式あるいは実験というモデルで切り取る」ことです。生活環境学部の認識方法は「世の中を生活の必要性で切り取る」ことです。多くの人類が今となっては狭い地球で幸せに生きていくために、これらの3学部の認識方法がそれぞれ必要です。各分野独自の方法を大学でマスターした人間が成長し、リーダーとして自分は無論他人にも影響を与え共に幸福を勝ち取ることができます。この知恵こそ大学で学ぶことです。
 これら専門的な学びと平行して必要なのが、教養です。グローバル人材ということが盛んに言われていますが、文化や言葉の違う人々を同僚として、同じ会社で働くことを想像してください。語学特に英語の必要性は無論ですが、話す内容を持つこと、お互いの意見を理解しあうことがより重要になります。そのためには、「沈黙は金なり」という従来の日本人の行動パターンではうまくいきません。しっかり考え、しっかり語ること、それが重要で、そのことを「教養」と呼んでいます。是非高い教養を身につけてください。このため、本学では今年から、小ゼミ、パサージュを開講し皆さんを鍛えます。もちろんコミュニケーションツールである英語は重要です。今年から、英語教育の実効性を高める目的で、学部を越えた能力別クラス分けを行います。有効に活用して下さい。

 さて、すこしアドバイスをさせてください。大学では、高校までと違って、専門が細分化され、ライバルや友人との客観的な比較が困難なため、自分の成長が見えにくくなります。そこで工夫ですが、この機会に何か映画を見てください。そして感想と批評を記録に残して下さい。就職活動あるいは大学院入試の前に、もう一度同じ映画を見て、感想と批評を書き、読み比べてください。ご自身の成長や「自立に向かう準備段階」を納得することでしょう。
 本大学は奈良にあります。自然にあふれていますが、古都ですので多くの文化遺産があります。千年以上前に、人々は幸せを願い多くの仏像を造りました。皆さんは「深く着実に考える」ことで幸せを紡ぐことのできるリーダーの卵です。仏像との対話を心がけてください。物事を深く考えることで国際人としての素養が培われます。

 最後になりますが、私たち教職員は皆さんの成長と活躍が大きな喜びです。この奈良の地で学んだことを、全国に持ち帰って育ててください。皆さんの前にある実り多い学生生活を祈念してお祝いの言葉といたします。

平成27年4月4日 奈良女子大学長 今岡春樹



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